福利厚生の見直しはいつ・どう進める?タイミングと手順を経営者・人事責任者向けに解説【2026年版】

福利厚生の見直しはいつ・どう進める?タイミングと手順を経営者・人事責任者向けに解説
目次

この記事でわかること

  • 福利厚生を見直すべき3つのタイミングと、その見極め方
  • 見直しを後押しする2026年税制改正とHR環境の変化
  • 棚卸し・評価・改廃を進める5つの手順
  • 見直しで優先すべき制度の判断基準

福利厚生の見直しは「下期スタート・税制改正の運用定着・HR環境変化」が重なる今が好機

福利厚生の見直しとは、現行制度の利用状況・コスト・効果を点検し、従業員ニーズや経営目的とのズレを修正する人事施策です。導入したまま長期間放置された制度は、働き方や従業員ニーズの変化と合わなくなり、コストばかりかかって使われない「形骸化」に陥りがちです。

2026年9月時点で見直しが特に推奨される理由は、3つの要因が重なっているためです。

  1. 上期実績の振り返りと下期・来期予算編成が動き出す時期で、現行制度の効果検証と新制度への切替を検討しやすい
  2. 2026年4月の税制改正から半年が経過し、食事補助の非課税枠拡大(月7,500円)の運用実務が定着してきた
  3. 人的資本開示の新基準が施行され、福利厚生を人的資本KPIと連動させる視点が求められている

経営者・人事責任者にとって、これらが重なる今は、福利厚生を「制度の寄せ集め」から「戦略的な投資」へと再設計する好機です。

福利厚生の見直しとは

福利厚生の見直しとは: 既存の法定外福利厚生(食事補助・住宅手当・休暇制度など企業が独自に設ける制度)について、利用率・コスト・従業員満足度を点検し、追加・変更・縮小・廃止を判断する一連のプロセスのこと。

新たに制度を導入するフェーズとは異なり、見直しは「すでに制度を持つ企業」が対象です。長く運用してきた制度ほど、時代や現場とのズレが蓄積しやすく、定期的な点検が欠かせません。

福利厚生を見直すべき3つのタイミング

見直しに着手すべき代表的なタイミングは3つあります。これらが重なる時期は、特に見直し効果が高まります。

① 下期スタート・来期予算編成のタイミング

3月決算企業では10月から下期が始まり、その後の11〜12月にかけて来期予算の編成が本格化します。この時期は、上期の福利厚生の利用実績・コストを検証しながら、下期の運用改善と来期の制度設計を同時に検討できる貴重なタイミングです。

上期の利用データがそろう9〜10月に棚卸しを始めれば、下期での改廃実施や、来期スタートに向けた新制度導入をスムーズに進められます。制度と現場のズレが見えた段階で着手すると、制度変更による混乱や手戻りを抑えやすくなります。年度後半のこの時期はその「着手の口実」として最適です。

② 税制・社会保険の扱いが変わったとき

税制や社会保険の取扱いが変わると、これまでの制度設計の前提が崩れます。とりわけ2026年4月の税制改正で食事補助の非課税枠が月3,500円から7,500円へと大幅に拡大した影響は大きく、改正から半年が経過した現在、実際に運用を始めた企業の事例も蓄積されてきました。

従来は非課税枠が小さく「気休め程度」だった食事補助が、改正により実効性のある支援策へと変わっています。改正直後は情報収集・検討にとどまっていた企業も、他社の運用事例が見えてきた今こそ、非課税枠を活かせる制度設計へと踏み込む好機です。

③ 採用・定着の課題が顕在化したとき

応募が集まらない、内定辞退が増えた、早期離職が続く——こうした採用・定着の課題が見えたときは、福利厚生が現在の求職者ニーズと合っているかを点検すべきサインです。制度が形骸化している兆候が見えたときも同様です。

見直しを後押しする2026年後半のHR環境変化

近年のHR領域では、福利厚生に求められる役割そのものが変化しています。2026年後半のいま、見直しを検討するうえで押さえておきたい3つの潮流を整理します。

「第三の賃上げ」としての定着

賃上げを行っても、社会保険料や税負担の影響で従業員の手取りが思うように増えない状況が続いています。こうしたなかで、給与とは別の形で生活コストを直接下げる福利厚生が「第三の賃上げ」として定着しつつあります。特に食事補助は、非課税要件を満たせば企業・従業員双方にとって効率的な支援策であり、税制改正後の実務でも中核的な選択肢となっています。

「使われない制度」からの脱却

制度はあるのに使われない——申請が必要、条件が複雑、利用シーンが限定的といった「摩擦」のある制度は、内容が魅力的でも次第に使われなくなります。2026年に重視されているのは、社員が意識せず日常的に使える設計です。手続きが不要で利用率が高い制度は、投資対効果も見えやすくなります。

人的資本開示との連動

2026年3月期から人的資本開示の新基準が本格適用され、企業には健康指標・エンゲージメント・離職率などのKPIを経営戦略と結びつけて開示することが求められています。福利厚生も単独施策ではなく、人的資本KPIを支える経営戦略・人材戦略の一部として位置づける視点が定着しつつあります。開示が求められるいま、「使われている」「効果が出ている」と説明できる福利厚生への再設計が急務です。

福利厚生の見直し 5つの手順

見直しは、次の5ステップで進めると失敗しにくくなります。

STEP1:現行制度の棚卸し すべての福利厚生について、内容・年間コスト・利用率を一覧化します。制度ごとの実態をデータで可視化することが出発点です。

STEP2:利用率・満足度の評価 制度ごとの利用率と従業員満足度を調査します。従業員の年齢・性別・家族構成などの属性別に整理すると、ニーズの分布が把握しやすくなります。利用率が低い制度は、その理由(知らない・使いにくい・対象が限定的)まで掘り下げます。

STEP3:課題と優先順位の整理 評価結果をもとに、改善・縮小・廃止すべき制度と、新たに追加すべき制度を整理します。5年以上手を加えていない制度や、形だけ残っている制度は特に重点的に点検します。

STEP4:新制度の設計と税務確認 追加・変更する制度について、非課税要件などの税務上の取扱いを確認しながら設計します。就業規則・福利厚生規程への反映も忘れずに行います。

STEP5:運用開始と効果検証 新制度の運用後、一定期間を経て利用率・満足度を再調査します。結果を踏まえて改善を重ね、定期的な見直しのサイクルを回します。

見直しで優先すべき制度の判断基準

限られた予算で見直しを進める際は、次の3つの基準で優先順位をつけると効果的です。

判断基準優先すべき制度の特徴
公平性全従業員が利用できる(特定属性に偏らない)
利用頻度毎日・毎週など日常的に使える
費用対効果低コストで満足度・税制優遇の効果が高い

この3基準すべてを満たしやすいのが食事補助です。全員が毎日利用でき、2026年改正で非課税枠が拡大したことで費用対効果も高まりました。「使われない制度」を縮小し、その原資を食事補助のような実効性の高い制度に振り向ける——これが見直しの典型的な成功パターンです。

Q&A

Q. 福利厚生の見直しはどのくらいの頻度で行うべきですか?

明確な決まりはありませんが、年度の節目(期首・期末)に合わせて毎年点検するのが理想です。少なくとも、5年以上手を加えていない制度がある場合は早急に見直すことをおすすめします。働き方や従業員ニーズの変化、税制改正などの外部要因が生じたときも、見直しの好機です。

Q. 制度を廃止すると従業員から反発されませんか?

利用率の低い制度を廃止し、その原資をより多くの従業員が使える制度に振り向ける形であれば、全体の満足度はむしろ向上します。重要なのは、廃止の理由と代替策をセットで丁寧に説明することです。一方的な縮小は不信感を生むため、アンケートなどで従業員の声を反映するプロセスが有効です。

Q. 2026年の税制改正は見直しにどう影響していますか?

2026年4月に食事補助の非課税枠が月3,500円から7,500円に拡大したことで、食事補助の費用対効果が大きく高まりました。改正から半年が経過し、実際に導入・拡充を進める企業の事例も蓄積されてきています。従来は非課税枠が小さく見送っていた企業も、他社の運用実績が見えてきた今こそ検討の好機です。見直しの際は、この非課税枠を最大限活用できる設計にすることがポイントです。

Q. 何から手をつければよいかわかりません。

まずは現行制度の棚卸し(STEP1)から始めてください。すべての福利厚生の内容・コスト・利用率を一覧化するだけで、「使われていない制度」「コスト過多の制度」が見えてきます。可視化できれば、次に何を見直すべきかの優先順位が自然と定まります。

Q. 中小企業でも本格的な見直しは可能ですか?

可能です。むしろ制度数が限られる中小企業のほうが棚卸しは短時間で済みます。大規模な制度改革でなくても、利用率の低い制度を整理し、食事補助のような費用対効果の高い制度に絞り込むだけで、満足度とコスト効率を同時に高められます。

まとめ

福利厚生の見直しは、期首・期末の節目、2026年税制改正、HR環境の構造変化という3つの要因が重なる今が好機です。導入したまま放置された制度を点検し、戦略的な投資へと再設計することで、従業員満足度とコスト効率を同時に高められます。

見直しを成功させるポイントを再整理します。

  1. 見直しのタイミングは「年度の節目」「税制・社会保険の変更」「採用・定着課題の顕在化」
  2. 2026年の税制改正と「第三の賃上げ」「使われない制度問題」といったHR潮流を踏まえる
  3. 進め方は棚卸し→評価→課題整理→設計→効果検証の5ステップ
  4. 優先順位は「公平性・利用頻度・費用対効果」の3基準で判断する
  5. 使われない制度を整理し、食事補助のような実効性の高い制度に原資を振り向ける

まずは現行制度の棚卸しから始め、自社にとって本当に効く福利厚生へと再設計していきましょう。

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この記事を書いた人

オフィス弁当・食事補助サービス「シャショクラブ」を運営する株式会社RETRYの編集チームです。食事補助の制度・税務から社食サービスの選び方、福利厚生の活用ノウハウまで、人事・総務担当者や経営者の意思決定に役立つ情報を現場の知見をもとに解説します。

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