食事補助を非課税で運用するには国税庁が定める2つの要件を満たす必要があります。半額負担・月7,500円ルールの実務、超過時の落とし穴、現金支給の扱い、計算例を経理・総務担当者向けに解説します。
※本記事は2026年4月時点の情報をもとに作成しています。最新の税制情報は国税庁の公式情報をご確認ください。
この記事でわかること
- 食事補助を非課税にする2つの要件と、それぞれの実務上の注意点
- 月7,500円を超過した場合に「全額課税」されるリスクの正体
- 税込・税抜の判定ルールと具体的な計算例
- 現金支給・レシート精算が原則課税となる理由
- 非課税要件を満たすための運用チェックリスト
結論:非課税運用には2要件の「同時達成」と月次チェックが必須
食事補助を非課税で運用するには、国税庁が定める次の2つの要件を毎月両方とも満たす必要があります。
- 従業員が食事価額の50%以上を実際に負担していること
- 企業負担額が月額7,500円(税抜)以下であること
このどちらか一方でも欠けると、企業負担分が全額給与として課税されます。「超えた分だけ課税」ではない点が、実務上もっとも誤解されやすいポイントです。
サマリー:いつ・だれが・いくら・どうなる 2026年4月以降、企業が現物支給する食事について、従業員が食事価額の50%以上を負担し、かつ企業負担が月7,500円(税抜)以下であれば、企業負担分は所得税の課税対象外となる。要件を1つでも満たさなければ企業負担額の全額が給与課税となる。
食事補助の非課税要件とは
食事補助の非課税とは: 企業が従業員に提供する食事について、国税庁が定める要件を満たす場合に、企業負担分を給与として課税しない取扱いのこと。所得税基本通達36-38の2に基づきます。
非課税で運用できれば、従業員は所得税の課税対象外として補助を受けられ、企業は福利厚生費として経費計上できます。要件は所得税法上の規定であり、住民税・社会保険料の取扱いも基本的に連動します。
非課税にする2つの要件【詳細解説】
要件①:従業員が食事価額の50%以上を負担していること
従業員が食事の価額のうち半分以上を実際に負担している必要があります。「ちょうど50%」でも要件を満たし、「50%超」である必要はありません。
実務上の注意点は以下のとおり
- 「払うことになっている」では不十分。給与天引きや決済アプリ等で実際に徴収している状態が必要
- 月途中の入社・休職・欠勤で利用回数がずれると、月単位の割合が50%未満になるケースがある
- 徴収の証憑(給与明細・利用履歴・請求明細)を残しておく必要がある
要件②:企業負担額が月額7,500円(税抜)以下であること
1ヶ月あたりの「食事の価額 − 従業員負担額」が7,500円(税抜)以下である必要があります。2026年4月の通達改正により、従来の3,500円から引き上げられました。
実務上の注意点は以下のとおり
- 判定は税抜で行う(税込で計算するミスが多発)
- 弁当の購入価額は軽減税率8%、社員食堂・契約食堂は標準税率10%が適用される
- 10円未満の端数は切り捨てて判定
最大の落とし穴:超過時は「全額課税」される
実務でもっとも誤解されやすいのが、月7,500円を超過した場合の課税範囲です。
誤解されやすい認識: 7,500円を500円超えたら、超過分の500円だけが課税される
正しい取扱い: 7,500円を超えると、企業負担額の全額が給与として課税される
計算例で見る課税の差
【非課税となるケース】
| 項目 | 金額(税抜) |
|---|---|
| 1食の価額 | 800円 |
| 従業員負担 | 400円(50%) |
| 月20日利用時の食事価額 | 16,000円 |
| 月20日利用時の従業員負担 | 8,000円 |
| 企業負担(月額) | 7,500円以内に収まる設計 |
| 課税扱い | 非課税 |
【全額課税となるケース】
| 項目 | 金額(税抜) |
|---|---|
| 1食の価額 | 900円 |
| 従業員負担 | 450円(50%) |
| 月20日利用時の食事価額 | 18,000円 |
| 月20日利用時の従業員負担 | 9,000円 |
| 企業負担(月額) | 9,000円(7,500円超過) |
| 課税扱い | 企業負担9,000円の全額が給与課税 |
500円の超過で9,000円全額が課税対象となるため、年間の給与課税額は108,000円規模に膨らみます。設計段階で7,500円ぎりぎりではなく、余裕を持った金額に設定するのが実務上の鉄則です。
現金支給は原則NG|「食事の支給」と「金銭の支給」の違い
非課税の取扱いは、企業が現物として食事を支給するケースを前提にしています。従業員に金銭を渡す形式は、税務上「食事の支給」ではなく「金銭の支給」として扱われ、原則として全額が給与課税の対象になります。
課税扱いとなる代表的なケース
- 毎月一定額の昼食手当を現金で支給
- 従業員が立て替えた食事代をレシート精算で会社が補助
- 食事代の50%相当額を翌月口座振込で補助
- 給与に「食事補助」名目で金銭を上乗せ
重要: 名目を「食事補助」「昼食代補助」としても、現金支給である限り原則は給与課税です。「半額補助だから」「月7,500円以下だから」という理由は、現金支給を非課税にする根拠にはなりません。
現金支給でも非課税となる例外
深夜勤務者に対し、夜食の支給ができない事情から金銭で支給する場合に限り、1食あたり650円(税抜)以下であれば給与課税の対象外となります。これはきわめて限定的な例外規定です。
非課税で運用するための実務チェックリスト
設計段階・運用段階の両方で確認すべきポイントを整理します。
制度設計時のチェック
| 確認項目 | 注意点 |
|---|---|
| 提供方式は現物支給か | 弁当・社員食堂・契約食堂・食事券(利用先が食事に限定されたもの)は現物支給扱い |
| 従業員負担は50%以上か | 1食ごと、月単位の両方で確認 |
| 企業負担(税抜)は月7,500円以下か | 7,000円程度に余裕を持たせる設計が望ましい |
| 就業規則・福利厚生規程に明記しているか | 制度の存在と支給ルールを文書化 |
| 給与天引き等の徴収方法が定められているか | 「徴収する仕組み」の有無が要件達成の前提 |
月次運用時のチェック
| 確認項目 | 確認方法 |
|---|---|
| 実際の従業員負担割合が50%以上か | 月次の利用履歴と徴収額を突合 |
| 企業負担額(税抜)が7,500円以下か | 食事価額の証憑(請求書・領収書)を月単位で集計 |
| 欠勤・休職等で割合が変動していないか | 月途中の異動者は個別チェック |
| 証憑が保管されているか | 利用履歴・請求明細・給与天引き記録 |
Q&A
Q. 月7,500円を1円でも超えたら、本当に全額課税になりますか?
なります。所得税基本通達では「月額7,500円以下」が要件であり、超過した場合は超過分のみではなく企業負担額の全額が給与として課税されます。ぎりぎりの設計ではなく、7,000円程度に抑えると安全です。
Q. 税込・税抜どちらで判定しますか?
税抜で判定します。弁当の購入は軽減税率8%、社員食堂や契約食堂での食事は標準税率10%が適用されるため、消費税額を除いた金額で7,500円以下かを確認します。10円未満の端数は切り捨てます。
Q. 食事券・電子マネー型のサービスは非課税にできますか?
利用先が食事に限定され、利用履歴が残る仕組みであれば現物支給として非課税要件の対象になります。ただし2要件(50%負担・月7,500円以下)を満たす必要があります。汎用の電子マネーや現金チャージ型は金銭支給とみなされる可能性があるため、サービス選定時に税務上の取扱いを確認することが重要です。
Q. レシート精算で食事代の半額を補助していますが、これは非課税ですか?
原則として課税扱いです。レシートを提出させて翌月口座振込で半額相当を補助する形式は、国税庁の質疑応答事例でも「金銭の支給」として給与課税対象とされています。半額補助・月7,500円以下という条件を満たしていても、現金支給である以上は非課税にはなりません。
Q. 50%要件を満たすのに、どんな証憑が必要ですか?
給与天引き記録、利用履歴、請求明細、徴収の根拠となる就業規則・福利厚生規程などです。「払うことになっている」だけでは不十分で、実際に徴収している事実を示せる必要があります。税務調査では、月次の利用回数と徴収額の整合性が確認されます。
まとめ
食事補助の非課税運用は、制度設計と月次運用の両面で正確な実務対応が求められます。
実務担当者が押さえるべきポイントを再整理します。
- 非課税要件は「従業員50%以上負担」「企業負担月7,500円(税抜)以下」の2つを同時に満たすこと
- 月7,500円を超過すると全額課税となるため、設計時は余裕を持った金額に
- 判定は税抜で行い、税率の違い(軽減8%・標準10%)を理解しておく
- 現金支給・レシート精算は原則課税。非課税にしたいなら現物支給型のサービスを選ぶ
- 月次で利用実績・徴収額をチェックし、証憑を保管する運用体制を整備する
非課税要件を満たした制度設計は、企業の福利厚生費計上と従業員の手取り増を両立できる強力な仕組みです。要件のどれか1つでも崩れると効果が消えるため、月次の運用チェックを仕組み化することが成功の鍵となります。
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